コロナで米国大統領選挙の行方に異変 投資は2番底を待ちチャンスを拾う戦略

 
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このコロナ禍が来るまでは、2020年の最大のイベントは、米国大統領選挙だと思っていました。

コロナ禍が米国でも猛威を振るうまでは、景気停滞局面に入っても、再選を脅かすほどの株価になるとは予想されていませんでした。

そんなブラックスワン(事前予想ができずめったに起こらないが、壊滅的被害をもたらす事象)が訪れたいま、11月に予定されている米国大統領選挙の行方に変化がありました。

最新の世論調査を元に、再選シナリオの行方と結果を左右するポイントを解説します。

目次

混とんとしてきた再選シナリオ

2016年11月に共和党候補として大統領選挙に当選したトランプ現大統領は、今回も共和党候補者として指名される見込みです。

一方の民主党候補は、スーパーチューズデーを経てジョー・バイデン元副大統領が指名されることとなりました。

過去50年間で、再選が果たせなかった大統領はたった3人しかいないことからも再選を狙う現職大統領が有利であることは知られています。

しかしコロナ禍を経て、状況は一変しました。

政策の良し悪しは別として、ここではコロナ禍の前と後で変わったトランプ大統領への評価を、ワシントンポスト紙が公表した最新の世論調査を元にご紹介します。

コロナ禍までの戦前予想

3月初旬頃にコロナ禍が米国を襲うまでの予想は、好調な経済を背景にトランプ大統領の再選が70%を越える確率との報道もされたほど確実視されていました。

その理由は大きく次の2つでしたが、そのどちらもコロナ禍の後は揺らいできているのです。

1. 経済(株式相場)は堅調であった

米中貿易摩擦が一応の着地点に至り、経済の拡大によりNYダウが史上最高値を更新しました。

失業率も3%台を維持し、2017年の就任以来株価を上げ続けていたことが政治家ではなくビジネスマン上がりのトランプ大統領の評価につながっていました。

≪前回大統領選挙日(2016.11.8)から2020.4.13までのNYダウ株価推移≫

参照:投資の森より、筆者作成

しかしコロナ禍による株価急落で、一時は2万1,000ドルを切って就任当初の株価を下回る水準まで下落しました。

もしこのままの水準が続けば、これまでの経済政策を全て否定されるような状況となっています。

2. 民主党の候補者選びが1本化できていなかった

トランプ大統領の所属する共和党は最初から1本化されていましたが、対抗馬となる民主党は複数候補が乱立し、スーパーチューズデーまでは有力候補を絞れない状況が続いていました。

しかも社会主義的な政策を挙げていたサンダース氏がトップだったこともあり、トランプ大統領は社会主義を批判すれば良かったのですが、そのサンダース氏が撤退したことを受け、バイデン元副大統領(オバマ大統領当時)に1本化されました。

ホワイトハウスに8年務めたことがあるバイデン元副大統領は、オバマ政権下でオバマケアと呼ばれる保険制度創設に尽力した高官です。

米国では日本のような皆保険制度がなく、特に黒人を始めとしたマイノリティの人々が加入できる公的保険制度がありませんでした。

黒人初の大統領となったオバマ元大統領の時代に創設されたこの保険制度を、トランプ大統領は予算の無駄遣いだと縮小しました。

それだけではなく、現在感染症対策で最前線に立っている米国CDC(疾病対策センター)の予算まで削減し、新型コロナ対策ではCDCの専門家の意見を聞かなかったと批判されています。

これまでも歴代大統領が災害の初動に失敗し支持率低下を招くことがありましたが、新型コロナ感染の拡大初期に行われたワシントンポストの世論調査では、バイデン候補相手の支持率で後塵を拝しています。

参照:Washington Post-ABC News poll March 22-25, 2020 筆者作成

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コロナ禍対応で迷走するトランプ大統領

「暖かくなれば、ウイルスは死滅する。イースター(4/12)までには経済活動が再開できる」

「消毒液を直接注射すれば良い」

「第2波の感染は来ない」

など、全く科学的根拠もなく専門家の意見を採り入れようとしないトランプ大統領は、失策を隠すために中国ウイルスと呼んだりWHOへの拠出金を停止するなど、外に敵を作ろうとしています。

コロナ対策への世論調査の結果は、次の通りです。

【トランプ大統領のコロナ感染症対策への支持率】

【トランプ大統領の感染症対策への対策は】

※Washington Post-ABC News poll March 22-25, 2020より、筆者作成

この調査が行われた3/25頃は米国感染者数が今の1/10以下であり、医療崩壊が起きる前の調査です。

経済活動優先のトランプ大統領が取ったコロナ禍への対応は批判されるべきものとなっており、再選にも悪い影響が出ています。

そして新型コロナ感染は州ごとで状況がかなり違う実情があり、今後の広がりによってはトランプ大統領の地盤と言われる州でも、接戦になることが予想されるのです。

米国感染者数のTOP15州(As of April 22, 2020)

参照:米国CDC:Number of COVID-19 Cases in the U.S., by State、日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外調査部米州課レポートより、筆者作成

※青の州:2016年大統領選挙で、クリントン候補に投票した州(民主党)

※赤の州:2016年大統領選挙で、トランプ候補に投票した州(共和党)

この表は4/22時点の感染者数が多い順に、並べたものです。

これを見ると、前回大統領選挙でトランプ候補を支持した州(赤色)でも感染は広がっており、その対策への不満が広がる可能性を示唆しています。

しかもトップ15の中で5/1までに経済活動を再開するとしているのが

7. ミシガン
11. テキサス
12. ジョージア
13. メリーランド
14. オハイオ

と、メリーランドを除き共和党支持州に偏っているのです。

※番号が黄色の州

合衆国である米国は州知事の権限が大きいものの、経済活動再開による景気浮揚を最優先したトランプ政権の息がかかった州で感染防止と経済再開のバランスが試されます。

混とんとしてきた大統領選挙の行方

今回の大統領選挙で争われる争点は経済や外交、税制改革、保険制度などさまざまですが、就任以来の3年間でトランプ大統領が最も支持されていた理由は「経済成長=株価上昇」でした。

マイノリティを排除し、教育には2018年の一般教書演説で触れることもしないぐらい興味が薄く、温暖化対策のパリ協定から脱退するトランプ大統領が再選確実とまで言われたのは、正に経済成長があったからこそでした。

その経済成長=株価上昇が生命線だと知っているからこそ、

感染症対策より経済再開を優先し株価をV字回復させる方針

なのです。

不況下で再選できた大統領はおらず、自身が就任した時の水準を越えていないと、在任期間の恩恵を受けたと感じられないため再選は難しくなるでしょう。

NYダウでは、21,000ドルを越える水準を指します。

なお3月のトランプ大統領支持率は2月よりアップし、不支持率を上回り48%となっています。

※Washington Post-ABC News poll March 22-25, 2020より、筆者作成

賛否両論あるトランプ大統領ですが、このまま支持率50%越えができるのか。

感染第2波が大統領選挙前の秋頃に再来するのか、その時の株価はどうなっているのか。

旧来の政治を批判して当選したトランプ現大統領が、異端児ぶりを突き通して再選するのか。

今後の感染封じ込めの行方、世論、株価に注目です。

混とんとしてきた大統領選挙は、世界の株式相場に大きな影響を与えます。

6月頃に来るであろうコロナショックの二番底を経て、秋頃まで回復したあと、11月までは乱高下が続くイメージを持って、株式投資の仕込み時期を探りましょう。

大統領選挙後は年末にかけての株価上昇ラリーを期待して、今は2番底を待ち投資のチャンスを拾う戦略をお勧めします。